館長の部屋
更新日:2023年11月17日
赤司 善彦(あかし よしひこ)
11月
皆さまこんにちは。
ついこの間まで昼間は半袖でも過ごせましたが、近頃はめっきりと寒くなりました。空は高くなり本格的な秋に突入しました。秋といえば文化の秋です。当館では秋の特別展として、古代の鏡を取り上げた展覧会を開催中です。
鏡は自宅や建物の洗面所にほとんど取りつけてあるので、皆さんも鏡を見ない日はないのではないでしょうか。現在の鏡は平坦なガラスの裏面に銀などをメッキしたものですが、古代は金属を磨いた鏡が用いられていました。今回、岡山市立オリエント博物館から借用したイタリア中部とイランで出土した2千年以上前の金属製の柄付鏡を展示しています。これは明らかに顔や姿を映した柄鏡と思われます。
さて、東アジアでは中国で少なくとも4千年前の青銅鏡の出土例が知られています。これらの中には顔を映しただけでなく、太陽の光を反射させて呪術に用いた鏡も存在していたようです(岡村秀典『鏡が語る古代史』岩波新書2017)。
このように日本を含めた東アジアでは、姿見というよりはさまざまな儀礼やお守りなどとして宝物の扱いをされるようになりました。そのためモノを映す表面ではなく、裏面に刻まれた縁起の良い文字や世界観などを示した図像が意味を持つようになりました。鏡面より裏面が大事になってきたのです。なので、鏡というよりは鏡型青銅器と言ったほうがいいかもしれません。
ところで、今回の展覧会での展示の目玉は、糸島市の国宝平原王墓出土大鏡です。おそらく東アジアでは最大の大きさを誇る鏡ではないかと思います。今から1800年程前の鏡です。『魏志倭人伝』に登場する「伊都国」最後の王墓とみられるお墓から出土しました。現在では表面がサビていますが、当時は鏡面を丁寧に磨かれていたとことでしょう。ピカピカの鏡面には何が映っていたのか想像しながら観覧くだされば幸いです。
これからますます寒暖差が激しくなると思います。暖かくしてお過ごしください。
令和5年11月17日
市民ミュージアム大野城心のふるさと館長 赤司善彦

- 「世界の水中遺跡の保存と活用」『水中遺跡の歴史学』山川出版社2018.3
- 「大宰府の都市の造営」『大宰府への道―古代都市と交通―』九州歴史資料館2018.4
- 「博多をめざした交易船をさがす」『西日本文化』478 2018.7
- 「公立博物館意識改革待ったなし」『西日本新聞』朝刊2018.7.21
- 「朝鮮式山城の特徴―主に兵站と備蓄―」鞠智城・古代山城シンポジウム資料集2018.10
- 「大宰府の都市と古代山城 The city of Ancient Dazaifu and mountain forts」イコモス・ICOFORT 国際会議2018論文集 2018.10
- 「古代山城とGIS―大野城・基肄城・阿志岐山城の眺望を中心としてー」『大宰府の研究』高志書院2018・11
- 「大宰府政庁前面域」『都府楼』50 公財古都大宰府保存協会 2018.11
- 「市民ミュージアム 大野城心のふるさと館」『歴史と地理 日本史の研究』264山川出版社2019.3
- 「市民ミュージアム 大野城心のふるさと館 こどもたちが歴史を体感する場」『歴博』213 2019.3 国立歴史民俗博物館
- 「大宰府と古代山城の誕生」・「大野城の研究成果」ほか『大宰府学研究』九州国立博物館アジア文化交流センター研究論集1 2019.3
注:「」は論題、『』は書籍名となります。
- 文化庁水中遺跡調査検討委員会副委員長
- 文化庁水中遺跡調査検討委員会協力者会議委員
- 日本学術振興会関連委員
- 福岡県・大野城市まち・ひと・しごと創生有識者会議委員
- 福岡県・春日市文化財専門委員
- 福岡県・久留米市文化財保存活用地域計画協議会委員
- 佐賀県・佐賀市東名遺跡整備基本計画策定委員会委員
- 長崎県・対馬市有識者会議構成員(対馬市博物館建設推進会議)
- 鹿児島県・瀬戸内町近代遺跡調査検討委員会委員長
- 鹿児島県・伊仙町生涯活躍のまちづくり町有地・施設利用構想検討委員
- 鹿児島県・徳之島町水中遺跡指導委員会委員
- 鹿児島県・天城町水中遺跡調査指導委員
- 鹿児島県・奄美市小湊フワガネク遺跡保存活用計画策定委員会委員
- 鹿児島県・与論町与論城跡調査指導委員会委員
- 九州国立博物館名誉館員
- 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所客員研究員
- 公益財団法人古都大宰府保存協会顧問
- 日本考古学協会会員
- 九州考古学会会員